機心と想像力

最近、大手飲食店やコンビニエンスストアのアルバイトによるSNSへの不適切投稿が問題となっています。

この出来事を見て、私は「機心」という言葉を思い出しました。

機心とは…

機械を有する者は、必ず機事有り。機事有る者は、必ず機心有り。機心胸中に存ずれば、すなわち純白備わらず。

という中国の古典「荘子」の中に出てくるお話です。

孔子の弟子である子貢という者が、旅の途中に井戸からかめで水を汲んでは、畑に水を撒いている老人に出会った。子貢は、その老人に「ハネツルベを使えば、効率的に水撒きができますよ」と声をかけました。
すると、老人は「わしもハネツルベは知っている。だが、機械を使う者は必ず機事がある。機事がある者は必ず機心がある。機心が胸の中に存在すると純白な心がなくなる。そうすると人らしい心が保てずに天の道から外れてしまう。だから、わしはハネツルベを知っているけど使わないのだよ」と答えました。

この話、2000年以上も前のお話ですが、この機心という観点で、一連の問題を見ていくと、どうしてこうした行動が起きてしまったか…合点がいくのではないでしょうか。

スマホなどのネット社会では、SNSで「いいね」をもらったり、目立つことが目的となりがちです。
最近ではインスタ映えという言葉もあり、その傾向がますます強くなっています。

その結果、現実社会における立ち位置や是非といった感覚が薄くなっている。
まさに「機心」が生じ、天の道から外れてしまったといえるのではないでしょうか。

そうしたことにならないようにするためには何が必要なのか…

私は、一言で言うならば「想像力」を磨くということではないかと思います。

「いいね」がもらえるかな
目立てばいいじゃん
炎上したら面白い

といったことも想像ですが、そればSNS上の限られた範囲、言い換えれば現実世界とは別の世界の話です。

現実世界と別…ということは、それこそまさに機事であり、機心であると言えるのではないでしょうか。

私の考える「想像力」とは

これは社会的に見たら良いことなのか、悪いことなのか
これをしたら社会的にどう思われるだろう
こんなことをしたら、会社や同僚、親兄弟に迷惑をかけるのではないか

といった現実社会での「これをしたら…」という想像です。

こうした想像力は、どうすれば養われるのでしょうか…?

それは、直接人と接し、うれしいこと、たのしいことはもちろん嫌なことや悩むことも経験し、成功と挫折を味わうこと、そうしたことで養われると、私は思います。
言い換えれば、気の合う人、好きな人とだけでなく、苦手な人、自分と考え方の違う人などとも直接接していく、このことが必要なのだと思います。
また、世の中には自分の価値観では矛盾や理不尽と感じるものがたくさんあること、このことを認識すること、このこともとても大切です。
そして、そうした認識を持つためにには、やはり様々な人と直接接していくこと、このことが必要なのです。
また、直接人と接していることが多くなれば、上述した「会社や同僚、親兄弟に迷惑をかけるのではないか」といった想像も生まれやすくなるはずです。
そう、ネット、SNSの中で人と接していてもダメなのです。
なぜならば、機心が生じ、人らしい心が保てなくなってしまう可能性が高くなるからです。

ネットやSNSは、今や私たちの生活になくてはならないものですが、必要以上に依存することのないよう気をつけるべきである…ということを、一連の出来事は証明しているのではないでしょうか。
ぜひ気をつけたいものですね。

そして、企業や組織においても、こうした観点をベースに、職場のコミュニケーションや組織のマネジメントを考えていくことも、リスクマネジメントのためにも必要なのではないでしょうか。

ヒューマシー人事労務研究所では、そうした良い組織風土づくりのためのコンサルティングや社員研修を提供しております。
職場の活性化や組織風土づくりでお困りの際は、ぜひご相談ください。

ご縁に感謝!
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。