組織や会社の矛盾・理不尽・不条理を受けとめる方法

会社や組織には、矛盾や理不尽、不条理がある。

人が集まれば・・・

組織には、矛盾や理不尽、不条理がある。

これは、何も会社に限ったことではありません。
太古の昔に、人類が誰かと一緒に生活を営み始めてから、ずっとそうなのです。

このことは、いろいろな国や文明の繁栄と衰退、蜜月と対立、争いの歴史をみればわかります。

石器時代や弥生時代でも
中国の三国志の時代でも
ヨーロッパのギリシャやローマの時代でも
日本の平安時代や戦国時代、江戸時代でも
アメリカの開拓時代でも

組織、というか人が集まれば、そこに矛盾や理不尽、不条理が生じ、それが繁栄と衰退、蜜月と対立から争い、といったものに影響を及ぼしていることは間違いないのです。

少し話が大きくなってしまいましたが、こうした矛盾や理不尽、不条理というものは、実は私たちの所属する組織や集団でも同じように存在しているのです。

でも、私たちは、このことに気づいていないことが多いのではないでしょうか。

だから、「おかしい」とか「納得いかない」ということがあると、すぐそのことを責めるのです。

責められても、説明のつかないことなのに・・・

そして、お互いが、イライラ、ムカムカし、不満や不安を感じる。

こうしたことが、いかに私たちの日常で起きているか、考えてみる必要があります。

会社や組織には、矛盾や理不尽、不条理がある・・・いや、それでできている。
このことに、私たちは、気づく必要があるのです。

我慢する理由がなくなった?

そして、こうした『「おかしい」とか「納得いかない」ということがあると、すぐそのことを責める』という風潮は、1990年代後半くらいから強くなっていないでしょうか。私は、長年人事という業務をしてきて、そのように感じています。労務相談の内容も、その頃から少しずつ変わってきているように思うのです。

昔は「あの上司を何とかしてくれ」とか「こうしてくれないのはおかしい」などという労務相談は、ほぼありませんでした。コンプライアンスやハラスメントという観点など、時代とともに求められることも変わってきていますので、一概にはそのことがどうだとか言えないのですが、最近は確実に以前よりも「あの上司を何とかしてくれ」とか「こうしてくれないのはおかしい」などという労務相談が増えてきています。

そして、それと比例するように、メンタルヘルス不調に伴う労務対応が増えているのです。それも、部下という立場の社員に対してだけでなく、管理職に対してでもです。

まさにここ数年、社会的に労働を取り巻く課題や問題として、メンタルヘルスが注目されていることと一致するのです。

私は、こうしたことの原因として、上述している「組織や会社には矛盾や理不尽、不条理がある」ということを受け止めるのではなく、それを「おかしい」とか「何とかしてくれ」と責める、こうしたことが影響していると思っています。
なぜなら、昔に比べ、管理職のメンタル不調が増えている、このことからも明らかだと思うのです。説明できないことを追及されるのですから、管理職も楽ではありませんからね。

では、こうしたことがどうして起きているのか?

その理由の1つとして、日本企業における年功序列・終身雇用の崩壊があるといえるのではないでしょうか。

年功序列・終身雇用は、戦後の日本企業においては当たり前の仕組みで、バブルが崩壊するまでは、日本式経営として世界的にも注目されていました。しかし、バブル崩壊後、長引く不況とグローバル化などにより、多くの企業が、年功序列・終身雇用をやめ、実力主義・成果主義へとその体制を変えていきました。それはそれで時代の流れでしたし、経営という観点では、必要なことだったのですが、会社で働く社員の意識においても大きな変化をもたらしたといえます。

その変化とは、おかしいと思ったり、納得がいかないと、我慢せずに口にするという変化です。

会社や上司から矛盾や理不尽、不条理なことを指示されたり、言われたりしても、「ここで頑張れば、自分の将来は約束されている」という思いがあり、それを我慢して受け入れ頑張る、もしそれに反発したり、受け入れなければ、将来の管理職としての地位や収入を棒に振る覚悟をする必要があるというのが、年功序列・終身雇用だったのですが、実力主義・成果主義においては、そうした我慢をする必要はないわけです。むしろ、自分の成果のためには、言わないことのほうが損だったりするのです。

だから、おかしければ「おかしい」といい、納得いかなければ徹底的に追及する。さらには、ネットの普及により、SNSや掲示板では、「それはいうべき」とか「主張すべき」という書き込みが多く、それに煽られる。そして、上司や会社を追及する。

上司や会社は、ハラスメントの問題などのこともあり、強く言えないし、そもそも明確に説明つかないものは相手の納得する回答ができないということで、曖昧な対応をしてしまう。

そうした対応に、社員はまた憤慨する・・・

こうしたことが起きてしまっているように思うのです。

繰り返しになりますが、矛盾や理不尽、不条理であるということは、きちんと説明や回答をしたくてもできないものもあるのです。

だけれども、そのことを部下から指摘や質問をされたら、上司は当然説明をしようとします。

しかし、それは説明できないものなので、苦しい弁明のようなものになり、部下は納得せず、さらに追及する。では、説明しなけば良いかといえば、それはそれでけしからんという話になる。

つまり、八方塞がりなのです。

私たちは、まずこのことに気づくべきだといえるでしょう。

力はどこに向けるべきなのか

また、こうしたやりとりが発生することで一番怖いのは、こうしたやり取りは、本来、ビジネスにおいて力を合わせて外に向けて注ぐべき力を、内に向けて使っているということになることなのです。

私は、日本企業が競争力を失っている原因の一つは、こうしたことにより、かけるべき力が分散してしまっていることにもあるのではないかと感じています。

確かに、コンプライアンスに反することや社会に対してどうなのかということについての指摘や批判、追及は、必要です。

「諫言」という言葉あります。「目上の人の過ちを指摘して忠告すること」です。ほら、時代劇などで、だらしない、あるいは乱暴狼藉をする殿様にむかって、爺などの家臣が「殿、もうおやめください」と訴える、あのようなことです。そして、こうした「諫言」をする場合、誠意を持ってということが必要となります。つまり、目上の人を懲らしめてやろうではなく、組織として会社として良い方向に向かっていくために言うことなのです。

こうした「諫言」といえる指摘や批判、追及、言い換えれば、健全な批判とでもいえる批判はすべきなのです。

しかし、そうでない矛盾や理不尽、不条理に対しては、批判、追及することはしないほうが良いのです。

会社や組織には、矛盾や理不尽、不条理があると受け止め、本当に改善すべきことなのであれば、ただ批判や追及をするのではなく、当事者意識を持ち、改善策の提案する。

そこまでのものでなければ、受け流す。

このようなスタンスで、矛盾や理不尽、不条理と向き合ったほうが、苦しまないで済むといえるでしょう。

ただ、だからといって、上司は、「だから矛盾や理不尽、不条理があるのは仕方ない」と考えてはなりません。少なくとも、自分自身が矛盾や理不尽、不条理の原因にならないように心掛けるようにすべきでしょう。そうした姿勢を持つことで、部下が「我慢することが必要なのはわかるけど、あの上司にだけは我慢したくない」という気持ちを持つことなく、お互いに矛盾や理不尽、不条理を受け止めて、職場において前向きな活動を推進していくことができる確率が上がり、上司自身も、矛盾や理不尽、不条理を部下から追及されることがなくなってくる。そういうものなのです。

ストレスは自分を磨く糧になる

ここまでお話してきた「組織には矛盾や理不尽、不条理があるが、それを批判、追求してはならない」ということは、頭で理解したとしても、それを実践するとなると、当人にしてみれば、ある程度のストレスを感じることは、間違いありません。

ストレスを感じるけれど、自分を律し我慢しなければならない。確かにつらいことです。でも、世の中にはつらいこともあり、それを乗り越えていかなければならないものもあるのです。そして、そうしたつらいことを乗り越えたときに、今まで見えていなかったことが見えたり、乗り越えたものが自分を守る盾になったりするのです。つまり、つらいことを乗り越えたときに人は成長するのです。

そう考えれば、組織や会社における矛盾や理不尽、不条理によるストレスも自分自身の成長に繋がるものと考えることもできるのではないでしょうか。

つまり、適度なストレスは、人間の成長には必要不可欠なものであるのです。それは、あたかも筋肉を付けるには、ある程度の負荷を筋肉にかけなければならない筋トレのように…

そう、矛盾や理不尽、不条理を何でもかんでも批判、追及しないで受け入れること、そのことは、決して我慢するだけのことではなくて、あなた自身の成長に繋がり、あなたを強くしてくれることなのです。

そして、このことをあなたが続けていけば、きっとあなたの人間性が磨かれ、職場においてなくてはならない人になっているのです。

いかがでしょうか。
多少こじつけ的に感じるかもしれませんが、私は、こうしたことは、間違いなくあると考えています。

ほら、皆さんもこんな経験ありませんか?
これまでの仕事人生を振り返ってみると、あの時があったから、今の自分がいるのだという経験が…
そして、そういう経験は、ほぼほぼ、順調にうまくいったものではなく、矛盾や理不尽、不条理などで苦労したり、あるいは失敗したりしたものだったりして、ストレスに苦しんだことだったりするはずです。

こうしたことからもわかるように、適度なストレスは人を成長させ強くするのです。
そしてさらには、そのストレスと対峙し耐えていくことで、その人の人間性は高められていくのです。

だから、会社や組織の矛盾や理不尽、不条理を感じたら、「自分が成長するチャンス」と考えて、健全でない批判や追及をしないようにすると良いでしょう。

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