過重労働やメンタルヘルスの問題を生む生産性を下げる職場の言動とは

「仕事の生産性」「過重労働問題」「仕事によるメンタルヘルス不調」・・・など働くことに関する問題が、最近何かと話題にあがることが多いです。こうした問題を考える時、それぞれ別の問題として考えてしまいがちですが、実はこれらの間には、それぞれ相関関係があるということに気づく必要があると言えます。

過重労働は、働く人のメンタルヘルスに悪影響を与える。メンタルヘルス不調による体調不良に陥ると仕事の生産性が落ちる。
その反対に、過重労働をしない(させない)ようにし、ワークライフバランスに配慮していけば、働く人が健康で生き活きと働け、仕事の生産性もあがる。
どちらも実際に起きうる相関関係ですが、これらを比較して考えた時、働く人一人一人の人生という観点で考えても、会社にとっての経営という観点で考えても、どちらの相関関係が望ましい状況か・・・改めて説明するまでもないでしょう。

なのに・・・

何故か、こうしたことが話題になる場合、その多くは「問題」であったり、「改善すべき」であったり・・・最悪の場合は「事件」というようなネガティブな形で、私たちに伝わってきます。
ということは、残念ながら現実は、「過重労働をしない(させない)ようにし、ワークライフバランスに配慮し、働く人が健康で生き活きと働け、仕事の生産性もあがる」ようにしたいけど、そうできていないという職場が多いのだと考えられるでしょう。

そこで、今回は、過重労働やメンタルヘルスの問題を生む生産性を下げる職場の言動・・・
特に、自分たちでは当たり前だと思っているけれど、実は気づかないうちに・・・という言動について考えてみたいと思います。

調整という仕事

仕事には、「調整」ということがあります。

・スケジュール調整
・事前調整(いわゆる根回し)
・部門間調整

・・・など、いろんな調整仕事があります。
どれも仕事を円滑に進めていくために必要なものなのですが、誰かのわからないを埋めるための調整という仕事の中には、仕事の生産性を高め円滑に業務を進めていくうえで弊害となるものがあるということを覚えておくと良いでしょう。

もちろん、仕事において相手に理解してもらうための調整(説明や資料の提供など)は必要です。
しかし、きちんと担当者が対応進めているのに、ふとその人(特に幹部や上司)が気になったから・・・とか、多くの社員は理解しているのに、その人(これまた特に幹部や上司)が確認不足や勉強不足で理解できていない場合など、単にその人のこだわりや思い込みなどが原因であることに対する調整は、時間や労力の無駄、さらには、そうした調整にあたる人(主に部下)たちの疲労と困惑を生むだけで、組織や職場の生産性低下や業務の停滞を招き、そうした調整自体あまり意味のないことだったりします。

よくある事例としては、「皆が納得しているのに部長だけが『わからない』と言っていて、皆が部長に理解してもらうのに汲々している」「直接関係のないお偉方が、突然『あれ、どうなっている』 と言ってきて、説明のための資料を作り説明をしなければならない」などがあります。

当たり前のようで・・・

確かに、立場が上の方にしてみれば、確認指示をする責任というものがありますから、上記のような言動は、至極当たり前のように見えます。
しかし、ほんとうにそれは必要なことなのでしょうか?

上記のような事象が起きている場合、「部下や社員を信用していない」「仕事を任せられない」「指摘すること、ダメ出しすることが、仕事だと勘違いしている」「そもそも、そう言っている人の勉強不足」・・・など、その幹部や上司の不安や自己満足から発っせられていることが、往々にしてあったりしないでしょうか?
仮にそうだとしたら、社員や部下のモチベーションや帰属意識の低下を招き、最悪の場合は、会社や上司への不信感を抱かせる。結果、生産性や質の低下、時間やお金の無駄が起きる といった経営にとってリスクとなる職場や組織の停滞を招く可能性があるといえるでしょう。

ですので、このようなことが起きないよう、まずはホウ・レン・ソウがきちんとあがってくる組織作りをし、社員や部下を信頼し任せて、ほんとうに必要なこと以外にこだわらない・・・そうした器の大きさを、管理職は身につける必要があると言えるでしょう。

仕事のやり方について気になった時

似たようなことして、次のようなこともよくあります。

仕事をしていると、他人の仕事のやり方について「こうしたほうが良いのに」とか「何でこうしないのだろう」などと気になることがあります。
そうした時、貴方は、それを相手に伝えたほうが良いと思いますか?それとも、黙っているほうが良いと思いますか?
一般的には、「当然、伝えるべきだろう」とおっしゃる方が多いと思います。そして、おそらくそのほうが良いのでしょう。
ただし、伝えるという行動をおこす際には、一つの前提条件があると言えるでしょう。
その前提条件とは・・・貴方がその改善に関与する気があるのであれば・・・ということです。

一部分だけ見ているだけ

しかし、多くの場合、こうした意見を言った本人が、一緒に改善に関わるということはないでしょう。
ということは、そうした気づいたことを伝えるということは、余計な一言というものになる可能性があるということを認識すべきでしょう。

人によるとは思いますが、その仕事を担当している人のほとんどは、プロ意識を持ち、いろいろな苦労をしながら、その仕事がうまくいくよう工夫や努力をしているはずです。
もしかすると、貴方の気づいたやり方も試してみたことがあるのかもしれません。しかし、何らかの事情でうまくいかず、今やり方をしているのかもしれないのです。つまり、貴方の見ているのは、その担当者がやっている仕事のほんの一部しか見えていないということなのです。

もちろん、仕事の改善や効率化を常に意識し、それに繋がる周りからの意見に謙虚に耳を傾けることは大切です。

しかし、アドバイスを求められてもいないのに・・・、そして、余計な一言というのは、その話をする必要がない時に「そうそう、前から思ってたんだけど…」みたいな感じで言ってしまうので、言われたほうがあまり良い気持ちにならない、そういう可能性が高いのです。
そして、それだけなら、気分の問題ですみますが、たいていの場合、そういうわけにはいかなくなります。たいていの場合、言われたほうが、説明をしなければならなくなります。仮に説明しなかったり、そうしたアドバイスを受け入れなかったりした場合、その一言を言ったほうの人が気分を害したり、陰で「せっかくアドバイスしたのに・・・」というようなことを言ったりして、結果的に言われたほうが悪者になったりするのです。本人は巻き込まれただけなのに・・・です。

だから、良かれと思う親切心からであっても、アドバイスを求められていないのに、こちらから余計な一言を言わないほうが良いのです。
「いいことに気づいた」と思ったときほど、自分の仕事でないのであれば、その思いをぐっと飲み込んで口にしない。
このことが、お互いプロ意識を持って気持ち良く仕事をするために大事なことだと思いますが、いかがでしょうか?

記録のため?

パソコンが仕事の場に入ってきて20年以上、今や一人一台パソコンが与えられるようになり、私たちの仕事の仕方も大きく変わりました。そうした変化に合わせ、仕事でのやり取りにおいてメールがなくてはならないツールとなりました。そうした中で、何でもかんでもメールでやり取りをするという人が増えています。時代と言えばそれまでなのですが、こうしたメールのやり取りにおいても、気をつけなければ、職場の生産性を下げてしまう言動が当たり前になってしまったりします。

その代表的な事例として、直接依頼や相談をし話をしているのに、「あ、この件、念のため、後でメールを送っておいて」と求める人がいるということがあります。

どうして用件は済んでいるのに、改めてメールを求めるのか・・・その理由として、そう求めている人の、「忘れないため」とか「頼まれた記録を残しておきたいから」などということがあるようです。このようなことって、何となく当然のように感じますが、実は不要なことなのではないでしょうか。なぜなら、直接依頼や相談をしている相手に対し、自分の念のためや保身のために、二度手間をかけさせている・・・つまり、相手の貴重な時間を奪っているといえるからです。

メールがなければ・・・

考えてみてください。

メールがなかった時代は、直接やり取りをすれば済んでいたことが、メールというツールができたら、一工程対応すべきことが増えたということにならないでしょうか。
こう書くと、「メールがない時でも、改めて文章を出してもらうことはあった」という人がいたりするのですが、さらによく考えてみてください・・・確かに、口頭ではなく文章で残すべき事象もあるのですが、その数は圧倒的に少なかったはずです。

どうしてこういうことが起きているのか・・・

一概に言い切ることはできませんが、「メールで送っておいて」という人の多くは、相手の話を聞く時、メモを取っていなかったりします。
「後でメールで送ってもらうからいいや」なのか、そもそも人の話を聞く時はメモを取るというビジネスマナーができていないのかわかりませんが、いずれにしてもビジネスの基本が崩れていることは間違いないでしょう。

こうしたことは、ある意味便利になったことにより、大切なビジネスの基本を忘れてしまった一例といえるでしょう。便利になったツールは、うまく使いこなし、大切な基本は忘れないようにしたいものですね。

さて、いかがだったでしょうか?

今回は

●上司の「わからない」を解決するための調整という仕事
●自分ではアドバイスのつもりでも「余計な一言」になる言動
●記録のためのメール

について取り上げてみました。

確かにITによる技術の進歩により、仕事をする環境は大きく変化しています。それに合わせて、ビジネスのルールも変化していくこともあるでしょう。
だから、メールで共有・記録を残すということも当たり前なのかもしれません。でも、それで、そこに関わる人たちが、質量ともに、そして心身ともに負荷を感じているのであれば本末転倒だと言えないでしょうか。

こうした視点を持つことが、便利になったからこそ、大切なのではないかと思います。まさに以前のコラムで書かせて頂いた「機心」に陥らないようにすることが、結果的に仕事の生産性をあげるのだと言えるでしょう。

今一度自社の状況を確認してみてはいかがでしょうか。

ヒューマシー人事労務研究所では、過重労働削減やメンタルヘルス対策に関するコンサルティングを提供しています。
そうした問題でお悩みであったり、職場風土の改善をお考えの会社の方は、ぜひ一度ご相談ください。