どうして人材が集まらないのか? 良い人材を採用し定着させる方法

どうしていい人材が集まらないのか?

最近、いろいろな企業から「募集をしてもいい人材が来ない」「せっかく採用してもすぐに辞めてしまい定着しない」というお話をお聞きします。
また、一般職業紹介状況(平成28年11月)では、有効求人倍率は1.41倍で前月比0.001ポイントアップ、求人数は前月比101.9%、前年同月比126.1%と24ヵ月連続で最高値を更新するなど堅調に推移しています。そういう観点から見ても、人材を求める側からすると「なかなか人材が集まらない」という状況が生じているということがうなづける結果となっている言えるでしょう。

【参考】※平成30年8月22日追記
有効求人倍率は、平成29年6月に1.51倍となり、以降1.50倍を超える水準をキープしてきました。
そして、平成30年5月にはついに1.60倍となり、翌6月には1.62倍と上昇を続けています。 

それともう一つ、最近の求人では、経験者を求める傾向が強いということがあります。中には、経験がモノをいう仕事や資格がないとできない仕事などもありますが、そうでない仕事であっても経験者であることが求人要件になっていることが多くなっています。
こうしたことは、限られた人員で仕事をし成果をあげていくという昨今の事業環境から考えれば、未経験者よりも経験者のほうが良いと考えるのは至極当然のことだと言えます。だから、経験者を採用したいのは、どこの会社でも同じなのだとも言えるのです。しかし、視点を変えみると、労働市場における経験者の数は限られているわけです。そう考えていけば、「募集してもいい人材が来ない」ということが多くの企業で生じているということは、起きて当然のことだと言えるでしょう。

だとすれば、良い人材をいかにして採用するのか・・・ということは、会社としてしっかりと戦略を練りそれに適した戦術を駆使していかなければならないことだと言えます。

そこで、今回のコラムでは、良い人材を採用し、そして定着させるためにはどうすれば良いのか。このことについて考えてみたいと思います。

何を譲れて何を譲れないのか

上述したとおり、経験者を、良い人材を採用したいというのは、中途採用をしようとする企業であればどこも同じです。
その一方で、企業が欲しいと思っている経験やスキルを有していて、人物的にも素晴らしいという人材は、そういないということも現実です。
だから、そうした人材が労働市場に出てくれば、複数の会社が「うちに入社してほしい」という争奪戦になることは容易に想像できるでしょう。

そうだとすれば、戦略は2つ・・・あくまでもそうした人材を採りにいくのか、それとも妥協できるところは妥協して人材を確保するのか・・・です。

あくまでもそうした人材を採りにいくというのであれば、自社の求める経験等を有している人材が運よく来てくれたらいいですが、そうしたことはなかなかないことだという認識を持ち、時間がかかっても仕方がないというある程度余裕を持ったスタンスで採用活動をしなければならないでしょう。

しかし、多くの企業では、「自社の求める人材が運よく来てくれれば・・・」という余裕を持った採用活動をするというのは、人が必要になりいざ中途採用しなければという段階においては、なかなか難しく、「すぐに」だったり「できるだけ早く」という事情で、そんなに悠長なことは言ってられなかったするのです。もしそうだとすれば、ほとんどの企業においては、2つめの「妥協できるところは妥協して」という戦略に目を向けるしかないと言えるのだと思います。つまり、何を譲れて何を譲れないのかをきちんと整理するということです。
具体的には
●経験とはどういう経験で、絶対に経験していなければならない仕事は何なのか。逆に言うと、経験していなくてもいいことは何なのか。
●資格は絶対に必要なのか。
●資格が必要だとすれば、既に持っていなければならないのか。それとも入社してから教育して取得させたのでは駄目なのか。
●経験よりも重視するものはあるのか、ないのか(例えば、人間性とか・・・)
・・・こうしたことをきちんと整理していき、譲れるものと譲れないものを明確にしていくということです。

こうして書くと、「なんだそんなことかぁ」と思う方も多いと思いますが、ほんとうにこうした整理をきちんとやっている会社は少なかったりするのです。
だから、「経験者」という大きな括りで見ていくので、「なかなか経験者が見つからない」という話になったりするのです。

上述したとおり、労働市場に経験者が出てくることはそんなに多くありません。そして、そうした経験者が労働市場に出れば、その人に「経験者が欲しい」という企業が殺到するのです。
ただ、その時に忘れてはならないのは、経験者と一口に言っても、人それぞれであるということです。ある人は、「これこれは経験しているが、あれは経験していない」、しかし別の経験者は「あれとそれは経験しているけれど、これは経験していない」ということがあるのです。そうした時に、募集をしている企業が、「うちの会社が必要なのはこの経験で、それ以外は必要ない、あるいは入社してから経験してもらえば良い」というようにきちんと求める経験の中身を整理していれば、採用面接において確認すべきことが明確にでき、ミスマッチを防ぐことができます。
また、そうした採用面接においては、応募者にも「この会社はどういう人材を求めているのか」ということがきちんと伝わります。そうしたことが、応募者にとっても、その会社への安心感や信頼感につながる可能性が高まります。ということは、自社が必要としている人材が応募して来て、面接などの選考の結果、会社がその人材を採用したいと考えた場合、応募者も「この会社に入りたい」という、相思相愛になる確率が上がったりするのです。

だから、最終的にはどのような経験者が応募してくるかによって、その判断基準は変化してくるのですが、何を譲れて、何を譲れないのか・・・ということを、経験者を採用しようとした時には、まずきちんと整理し明確にすることが必要だと言えるのです。
繰り返しになりますが、経験者と言っても人それぞれ、経験している内容は千差万別なのです。このことを忘れてはならないでしょう。

実は意外なところに原因が・・・

転職活動方法の変化

さて、ここまで経験者を採用したい時にどのように戦略を練っていけば良いのか・・・という視点で考えてきました。
が、ちょっと視点を変えてみると、労働市場に出てきた経験者も、最終的にはどこかの企業に入社するわけです。とすれば、それが自分たちの会社であれば一番良いわけです。しかし、これまで検証してきたとおり、時間的なことと合わせて考えるとそれが一番難しい。だから、あくまでも経験者でぴったりと要件に合う人を採用するということがなかなかできないわけです。

ところが、意外なところにそれを解決する糸口があったりします。
ということで、次にその意外なものとは何なのか・・・このことについて、お話をしていきたいと思います。

最近の転職活動において、転職者がどのような媒体を利用しているのか・・・?

一昔前は、求人雑誌、それからインターネットが普及するとWebの求人サイトが、転職活動の主流でした。が、職種にもよりますが、最近では、人材紹介会社に登録して転職活動をする人が増えています。
人材紹介会社に登録すると、人材紹介会社は、転職希望者に対して担当コンサルタントを付けることがほとんどです。担当コンサルタントは、その転職希望者を理解し、求人情報とマッチをはかるため、そして、転職希望者に適切なアドバイスを行うために、転職希望者に対するヒアリングを細かく行います。このヒアリングでは、当然どうして会社を辞めた(辞めたい)のか・・・ということも確認します。こうしたヒアリング内容は、原則としてその転職希望者の転職活動において活用されますが、その人材紹介会社であり、そのコンサルタントのデータベースとして蓄積されていきます。そして、そうしたデータベースの中には、貴方の会社に在籍していた人からの情報も含まれている可能性もあることでしょう。
もちろん、そうした情報は、個人情報に関わるものが多いので、その取り扱いは厳重にされているはずですが、一方で生の声として、少なくとも各コンサルタントの記憶には蓄積されていきます。ここが、重要なポイントなのです。

つまり、貴方の会社にいた(いる)人が転職理由をコンサルタントに話した時に、どのような話をするか・・・です。もし、会社に対する不満や会社に問題があるような話をされたら・・・
もちろん、コンサルタントはプロなので、その話を鵜呑みにすることはないと思いますが、「もしかしたら・・・」くらいは思うかもしれません。そして、その転職希望者とは別の貴方の会社にいた(いる)転職希望者から似たような話が出てくると・・・
そう、このようにして人材紹介会社には、最初は一人の転職希望者からの話であっても、徐々により実態に近い情報が蓄積されていくのです。

これが恐いのです。

ある経験者が人材紹介会社に登録をして転職の相談をします。人材紹介会社は、その会社に求人を依頼している企業の募集要項と照らしてマッチングをはかります。その時に、マッチする会社が1社だけであれば問題ないのですが、そういうことはあまりないでしょう。前述したように、同業者が同じように経験者を探していることが多かったりしますので、そうした企業のリストの中から「どこにまず紹介しようか」ということになります。そうした時に、様々な要因がありますが、かなりの確率でネガティブな情報のある会社よりも、そうでない会社を優先的に紹介していくということになるでしょう。

これは全ての会社に当てはまるというわけではありませんが、求人の時に人材紹介会社を利用していて、社員の出入りの多い会社では、意外とこうしたことで良い人材が集まらないのかもしれません。

SNSでの何気ないつぶやきが・・・

また、最近では、SNSの普及により一般の人が情報を発信しやすくなりました。中には、そうした投稿から有名人になっていく人などもいる時代です。
おそらく、貴方の会社の社員もかなりの割合でSNSをやっていることでしょう。
そして、過重労働やメンタルヘルス不調などの問題がある会社の社員なんかだと、例えば「今日も残業で最終電車ギリギリだった」とか「今週も仕事で休日つぶれた」とか「仕事忙しすぎて体調悪い」・・・などという書き込みをする可能性も十分にあり得ます。本人に会社の悪い噂や会社の不満を流そうというつもりはなくても・・・

何が言いたいのかというと、このように上述した転職活動のことも含め様々な形で、会社の悪い情報は、今の時代、社内だけに収まらずに社外に洩れていくものだと考えたほうが良いということです。

今いる社員を大切にする

ここまで見てきたことをふまえ、良い人材を採用し定着させるには、どうすれば良いのか・・・

その方法は、次のようなことだと言えるのではないでしょうか。

今いる社員を大切にし、辞めさせない。
辞める場合でも、会社のファンにして辞めていくようにする。

こういうことだと思います。

そうすれば、以下のようなことが起きてくる可能性が高まります。

●今いる社員が経験を積み優秀な経験者になる
●そうした人材が辞めないことで採用コストも抑えられる
●社員一人一人の生産性が上がり業績にも良い影響が出る
●人が辞めないこと、経験を積めるなどが評判となり、募集をかければ良い人材が集まる

いかがでしょうか。こうしたことってあり得ないでしょうか?

一見、採用と既存社員の労務管理、別々のことのように考えてしまいがちですが、実はつながっているのです。
だから、そのことをまず認識する。そして、今できることから初めてみる。
このことに気づいた会社が、新たな人材が必要になった時に、本当に良い人材を採用し定着させることができるのだと言えるでしょう。
あ、それからくれぐれも優先的に紹介しない人材紹介会社が悪いなどと考えないように・・・こうした社員を大切にすることができ、辞める場合も会社のファンで辞めていくような会社になるようにするほうが、はるかに健全だと言えるのですから・・・

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